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2021年05月01日

2021年度 東京大学二次試験講評《日本史》

試験時間は、地歴2科目で150分。大問4題。すべて論述問題で出題形式は昨年度と変化なし。今年度は昨年度のような図版を利用した問題は見られず、参考文を設問の主旨に沿って解釈し、基本的な日本史の知識と合わせて記述させるのも従来通り。東京大学の日本史対策としてはまず、この出題形式に慣れることが最優先である。

第1問は「9世紀後半の体制の安定とその背景の変化」。参考文(1)~(5)を読み解き、設問が求める体制安定と背景の変化について150字以内で論じる。皇位が安定し、直系で継承されることによる天皇権力の強化、法典編纂・官僚制の整備、藤原北家が天皇の外戚としての地位を固めたことで、天皇の政務代行が可能になったことを指摘する。

第2問は「13世紀における荘園制」。A.「荘園領主が検注を実施しようとした理由」について60字以内で論じる。参考文(1)~(3)から、検注とは年貢徴収のための田地調査のことであることが判断でき、荘園領主は地頭が新たに開発した田地も正確に把握し、確実に年貢を徴収しようとしたことを指摘。B.「地頭請が地頭の荘園支配において果たした役割」を90字以内で説明する。条件として、検注や開発との関係に触れることが求められている。参考文(3)(4)から、地頭請が荘園領主の検注を拒否する根拠となっていたこと、地頭が荘内開発を進めながら独自支配を強めたことをまとめる。

第3問は「富士山大噴火による被災と幕府の対応」。A.「17世紀後半以降の幕府財政上の問題」について60字以内で論じる問題。幕府が参考文(1)(4)のような対応をとった背景をまとめる。参考文(1)には「近年出費がかさんでおり…」とあることから、この時期の幕府の出費が主に何だったかをまとめる。加えて参考文(4)にある「49万両のうち、救済に使われたのが6万両…」とあることから、残りは幕府の財政に補填されたことは明らか。以上から当時の幕府財政における収入と支出を論述。B.「被災地の救済にあたって幕府が取った方針とその問題点」について90字以内で論じる問題。条件として「参考文(2)(3)のように対応が異なる理由に注意すること」とある。参考文から幕府が優先したのは豊かな足柄平野を潤す酒匂川の復旧であり、被害が甚大だった酒匂川上流の冷涼な富士山麓の村々ではなかったこと、上流復旧への対応が後手に回ったことで、余計に下流の被害が大きくなったことについて触れる。

第4問は「華族令と第二次護憲運動」について。A.「華族の構成の変化とその意図」について90字以内で論じる問題。参考文(1)(2)(4)の内容と、上院としての貴族院設立を企図して華族令が出されたことを組み立てる。B.「1924年に高橋是清がこうした行動をとった理由」について90字以内で述べる。条件として「この時期の国内政治の状況にふれながら」とある。「こうした行動」とは、設問にある通り“子爵であった高橋が、隠居をして、貴族院議員を辞職した上で、衆議院議員に立候補した”こと。参考文(4)「華族の戸主は被選挙権を有せず」とあること、参考文(3)から「同時に両議院の議員たることを得ず」とあるので、高橋が貴族院議員を辞して衆議院議員として立候補する資格を得ようとしていたことは明らか。また設問にあるように「清浦奎吾内閣は、衆議院を解散し…」とあるので、第二次護憲運動の展開について論じることを求められている。

上記からも明らかだが、東京大学の日本史対策は、他大学への対応と同じことをやっても点数には結びつかない。参考文や史料、図版等を正確に読み取り、かつ日本史の語句知識を踏まえ、問題文に沿って解答を作成する能力を求められる。東京大学の日本史攻略のためには徹底した過去問研究と添削指導を受けることが必須条件である。





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