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2021年05月01日

2021年度 東京大学二次試験講評《国語》

文科は150分・4題(120点)、理科は100分・3題(80点)で、配点・問題数共に例年通り。

第1問の現代文評論(『ケアと共同性―個人主義を超えて』松嶋健)、第2問の古文(『落窪物語』)、第3問の漢文(『霞城講義』井上金峨)は、文理共通問題。ただし、古文で2問、漢文で1問、理科の小問数が少ない。第4問は例年通り文科のみの問題で、現代文随筆(『子規の画』夏目漱石)であった。

現代文は傍線部説明問題(大問1には120字記述がある)、古文・漢文は現代語訳・説明問題をそれぞれメインにし、各大問それぞれ相当な記述・論述量を要求する例年通りの設問内容であった。

第1問の評論の文章量は2020年度よりやや増加した。2000年度以降、4題出題されていた2行説明の問題が、2017年以降1題減少し3題となっている。100字から120字での内容説明問題は従来通りの出題であった。共同性や相互性に基づくケアの実践が国民国家や個人主義に特質付けられる近代国家の論理を乗り越える可能性を論じた文章であった。二項対立を前提に両者の属性を丁寧に分類し読んでいけば各設問の解答指針は立てられるため、全体を通して標準的な難易度であったと言える。

第2問の古文の文章量は2020年度より減少した。平安時代の物語が出題されたのは2017年以来4年ぶりである。『落窪物語』は継子いじめをテーマにした有名作品であり比較的取り組みやすかったと思われるが、基本的な文法事項や単語処理のミスが許されず文脈に即した傍線解釈が要求されている点から全体として昨年程度の難易度と判断。

第3問の漢文は江戸時代の儒学者の文章で相当平易な逸話が出題された昨年からは大幅に難化。中心となる重要句形は明確に掴める設問が多い一方で、冗長な記述では要求字数におさまらないものが多く、内容を簡潔にまとめる力が要求された。

文科の第4問は夏目漱石の随筆からの出題で、難易度は昨年並。分量は2020年度より減少した。短い文章の背後に潜む作者の考えをリード文も含めた前後情報から丹念に精査する必要があった。第4問の対策としては断片的な表現処理技法ではなく文章全体の正確な読解力を培う鍛錬を積み重ねることが有効だろう。

全体的に、高質で難易度の高い問題であるため、受験生の得点差が大きくなるだろう。本文の正確な読解力・解釈力に加えて、スピードと精度、さらに設問要求に適合した実戦的な記述・論述解答力を確実に習得した者には、かなりの高得点も可能である。それには、何よりも比較的解きやすい古文・漢文での時間短縮が不可欠である。





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