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2022年01月25日

2022年度大学入学共通テスト講評

2022年1月15日・16日に大学入学共通テストが実施されました。鷗州塾高校部の実力講師陣による各科目の講評を下記にまとめています。

▼科目名をクリックして、ご確認ください。
英語
数学Ⅰ・A数学Ⅱ・B
物理化学生物
物理基礎化学基礎生物基礎
日本史B世界史B地理B
倫理、政治・経済
国語


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英語
試験時間はリーディング80分、リスニング30分で、各100点で実施された。

リーディングの傾向

①総語数が近年では最多に
昨年度から共通テストに変わり、従来のセンター試験より語数が1,000語以上増え、全体で約5,500語となったが、今年度はさらに約400語増え、6,000語に近づいた。
②文法問題・文法形式の問題は出題なし
昨年度に続き、すべての問題が読解問題のみとなり、問題もほぼすべて英語で表記された。
③写真・グラフ・広告などの資料と英文を同時進行で処理する問題が主流に
英文を読み、問に答える問題ではなく、英文と資料を見比べながら読解したり、英文を読みながら表を完成させたりする問題は、今年度もほぼすべての大問で出題され、共通テスト英語リーディングの「核」となった。

上記が特徴として挙げられ、これは昨年度の傾向を大きく踏襲した。

リーディング対策として重要になること

①80分で6,000語を読み切れる読解力と集中力
読解力・集中力を身につけるためには、普段の読解で何を題材として扱っているかは非常に重要。共通テストの過去問はまだ2年分しかないため、英検®や国公立大学・私立大学の過去問を多岐にわたり演習しておくことが共通テストで高得点を目指す上で必要である。
②正しい読解力
問題の中には、どこが具体例なのか、主張として本文内で何を言いたいのか、ディスコースマーカーの役割とは何かを考える重要度がセンター試験よりも随分増している。このようなロジカルな考え方は、全訳をただ行い、英文読解練習をするだけでは身につかない。
③写真・グラフ・広告などの資料と英文を同時に扱うための「慣れ」
受験生の中には、資料と英文を同時に扱うことに苦手意識のある生徒も少なくない。この種の問題は、あまり他の大学入試では出題されないことから、共通テスト・センター試験の過去問で演習するのが克服の近道となる。不安な場合は、週に1回演習を行うと良い。

リスニングの傾向

①英文が2回流される問題と、1回しか流されない問題がある
100点満点のうち約40点分は英文が2回流され、残りの約60点分は1回しか流されない形式は、昨年度と同様であった。
②英文を聞いてイラストを選んだり、表を埋めたり、グラフを選ぶ問題が出題
①と同様に、昨年に続き、英語を聞いて英語の選択肢を選ぶだけではなく、英文を聞きながら資料を扱う複合的な能力が問われた。
③アメリカ英語だけではない英語が放送された
これも昨年度と同様の傾向であるが、アメリカ英語だけでなく、アジア系やイギリス系といった複数種の録音が使用された。

上記が特徴として挙げられる。

リスニング対策として重要になること

①リスニング力の日々の鍛錬
リスニングに苦手意識の強い生徒でも、半年から10か月間きちんと学習することで、結果は必ずついてくる。英検®2級および準1級の受検などを利用して、継続してリスニング学習をする習慣を身につけたい。難易度で見ても、英検®準1級レベルがある程度聞き取れる受験生であれば、共通テストのリスニングは大丈夫であろう。
②一度に内容を正確に読み取れる英文読解力
リスニングは英語を聞く能力がすべてだと思われがちだが、放送で指定された時間の中で、選択肢を正確に読み、表や資料の内容も正確に把握するためには読解力がかなり必要である。音源の大意は聞き取れているのに、正答率が悪い場合には、原因は読解力にある可能性が高い。
③共通テストリスニングに応じたテクニック
各設問で、ただ音源を聞くだけでなく、効果的に得点できる方法=受験テクニックもある。これは塾内の文法系授業等で併せて対策していくので、ぜひ受講してほしい。
数学Ⅰ・A
数学Ⅰ・数学Aは昨年までにはない問題が多かったため、戸惑った受験生は多かっただろう。複数の単元の融合問題もあった。問題の文章量は昨年とほとんど変わらなかったが、思考を要する問題が多かったため、時間内に解き切るには厳しかったと予想される。センター試験の過去問演習だけでは対応が難しかったであろう。試験時間は70分で、変わらなかった。

第1問

〔1〕は対称式についての計算問題。出題形式は従来通りだったため、解きやすかったであろう。
〔2〕地図アプリを使用し、山頂を見上げる角度に関する問題。図の縮尺を考え、正接を求めるのは難しかったであろう。
〔3〕三角形の外接円に関する問題。正弦定理を利用し、直径に着目して長さの範囲を求めるのはやや難しかったであろう。【やや難】

第2問

〔1〕は2つの2次方程式の解の個数の問題。2次関数のグラフの平行移動と必要条件・十分条件など複数の単元が融合された思考問題だったため、難しかったであろう。
〔2〕はデータの分析に関する問題。ヒストグラムから四分位数、箱ひげ図、散布図、相関係数を読み解く問題で、基本事項が分かっていれば、解きやすかったであろう。散布図は点を細かく見ていく必要があった。【標準】

第3問~第5問は選択問題で、この中から2題を解答する方式で、これは従来の形式と変わらなかった。

第3問

プレゼント交換の仕方に関する確率の問題。2人、3人、4人、5人と人数が増えるが、丁寧な誘導に従っていき、前問を利用すれば解きやすかった。交換会が終了する場合の数や確率を求めるのに、終了しない場合を利用する工夫が必要であった。【標準】

第4問

1次不定方程式の問題。(1)は典型的な問題のため、解きやすかった。(2)は(3)を解くための誘導問題となっていたが、誘導に乗れなかった生徒も多かっただろう。(3)は問題文の意味が読み取りにくく、計算も大変だったため、最後まで解き切れない受験生は多かっただろう。【難】

第5問

三角形と線分に関する平面図形の問題。(1)(2)は点Fが確定されていないので、どこに取るかで戸惑った受験生は多かっただろう。また、メネラウスの定理をどの線分で利用するのか、分かりにくかったであろう。(3)は(1)の考え方を利用すれば解きやすかった。【やや難】

数学Ⅰ・A全体としての難易度は、計算だけではなく「思考力」を問われる問題が多かったため、かなり難しかったであろう。解答の道筋が見えにくく、計算も煩雑であり、時間内に解き切るのは難しかったと思われる。共通テストの方針はこれで明確になった。問題文の正確な読解・誘導の正しい活用・グラフや図形からの立式など、共通テスト特有の対策だけでなく、国公立大学の二次試験のレベルの問題演習もこなしていかなければ、太刀打ちできないであろう。

数学Ⅱ・B
数学Ⅱ・数学Bは問題文が増え、解答にたどり着くまでに時間を要した受験生は多かったであろう。三角関数が数年ぶりに大問では出題されず、図形と方程式が出題された。また、解答群から正解を選ぶ問題が増えた。試験時間は60分で変わらなかった。

第1問

〔1〕は図形と方程式の円の接線に関する問題。太郎さんと花子さんが別々の解法を示しており、その過程の中で、三角関数を利用していた。丁寧な誘導があったので、最後まで解きやすかったであろう。【標準】
〔2〕は対数の大小関係に関する問題。太郎さんの考察から読み解く問題で、具体例から一般化していき、大小関係を求めることに戸惑った受験生は多かったであろう。最後は時間的にも答えにたどり着くのは難しかったと予想される。【やや難】

第2問

微分積分で、〔1〕は極値を持たないグラフを選ぶ問題と3次方程式の解の個数の問題。どちらも標準的な問題だが、平方根は丁寧に計算したい。 〔2〕は2つの3次関数および直線で囲まれた面積を求める問題。グラフの上下関係を把握できれば、答えは導きやすかったであろう。最後は3次方程式の解を求める問題であったが、組み立て除法の因数分解ができれば解けたであろう。【標準】

第3問

今年も第3問が確率統計であった。

第4問

数列で、今年も漸化式の問題。今年は問題文が長く、歩行者と自転車の動きが複雑で、丁寧に読み解かなければ、設定が把握できなかったであろう。ただ、歩行者と自転車の位置関係がグラフで表されていたので、それを参考にできれば、漸化式を立てることができたであろう。漸化式自体は標準的なもので、一般項は求めやすかったであろう。【難】

第5問

平面ベクトルで、円周上の3点からさまざまな点の位置を把握する問題。ベクトルの垂直条件は標準的なものだった。後半は太郎さんと花子さんの会話文から点を図示することができれば解けたであろう。【標準】

数学Ⅱ・B全体としての難易度は、問題文が長く、複雑な設定もあったため、難しかったであろう。長い問題文を読み解く「読解力」と、制限時間内に解き切る「計算力」が必要であった。大問が一つにつながっており、各問題の最後の問題を解くには、すべてを把握しなければならないようになっている。ただ、会話文に随分ヒントが隠されているため、それを見抜ける力を身につけたい。

物理
試験時間は60分。昨年の共通テストと同様に、大問数は4題で、選択問題はなく、すべて必答問題であった。分野ごとの配点は、「力学」が35点、「電磁気」が30点、「波動」が10点、「熱力学」が5点、「原子」が20点であった。原子物理が1つの大問として出題されたが、出題内容としては基本的な問題であった。難易度は2021年度の共通テストよりも、やや易化している。見た瞬間に即答できる問題もあれば、問題文を丁寧に読む必要のある実験考察問題もあり、バランスの良い出題だったといえる。

第1問

小問集合で、水面波の干渉・凸レンズによる実像・重心・P-Vグラフ・電流が磁界から受ける力が出題され、特に新傾向ということもなく、典型的な出題であった。特に、凸レンズによる実像の見え方については、中学理科で履修する内容であった。

第2問

力学の仮説とその検証をする問いであったが、誤った仮説であるため、困惑した受験生もいたことであろう。問6は水平方向の運動量保存則が成立するが、衝突して一体となっているため、力学的エネルギーは保存されないことに注意したい。典型的な衝突の問題とは速度の方向が異なるため、運動量保存則の成立条件を正しく認識できている必要があった。

第3問

コイル内を棒磁石が通過するときの誘導起電力に関する出題であった。問1はコイル間0.20mを0.4秒で通過しているのを読み取れれば良い。問3では起電力の最大値が2倍になっていることから、強い磁石にしたか台車の速さを大きくしたかであるが、2つの起電力が生じた時間が変わっていないことから、速さは変化していないことが明らかである。問5では斜面で加速することで起電力が大きくなっていくこと、および起電力を発生する時間間隔が短くなっていくことから、正答にたどり着くことができる。

第4問

原子物理で、水素原子のボーアモデルについての典型的な出題であった。問1は等速円運動に関する出題であり、ほぼ力学の内容である。問3では半径を量子数で表した式が与えてあり、等式変形の手間が省けるため、運動エネルギーと静電気力による位置エネルギーの和を立式し代入するだけであった。過去に類題を解いたことがある受験生であればスムーズに立式できたであろう。問4は光子のエネルギーの公式を覚えていれば容易に解ける。

従来のセンター試験同様、共通テストになってからも、力学と電磁気が約30点ずつという配点は大きく変わっていないが、原子物理の割合が昨年に比べ増えていることに注意したい。また、今年は身近な題材を基にした初見の設定の出題がなかったが、普段の学習から単に解答を出すだけに留まらず、問題演習を通じて立式の根拠となる発想を理解し、物理的な考え方を身につける訓練を行うことが必要不可欠である。そして、それこそが、どのような出題にも安定して高得点を取るための唯一の方法である。

化学
試験時間は60分。2点~4点の問題を中心に、化学の全範囲から偏りなく出題されている。一部に化学基礎の内容も含まれる。昨年同様、大問5問が必答形式で出題され、マーク数は、2021年の共通テストから4増加した33となり、分量は増加した。正誤問題は昨年よりも正解の選択肢を選びやすいものが多かったが、複数の過程をたどる必要がある計算問題が昨年より多く出題されていたため、例年以上に受験生のレベルによる得点差が大きくなったであろう。

第1問

化学基礎の内容に加え、気体・溶液分野で構成されていた。問3の混合気体の密度と成分気体の分圧の関係を表すグラフを選ぶ問題は、過去の入試問題に類題はなく、どう処理していけば良いか悩んだ受験生もいたであろう。

第2問

熱化学・電離平衡・反応速度・電池分野で構成されていた。問4 aの水素吸蔵合金中に貯蔵できる水素の物質量を測定する問題は、気体定数が与えられているため、状態方程式を用いて解いた受験生が多かったと思われるが、標準状態で気体1molは22.4Lであることを使えば、概算で正解が得られる設問であった(第1問 問5 bも同様)。

第3問

無機化学分野からの出題であった。問2の金属酸化物の組成式を決定する問題では、酸素分子と酸素原子の違いに注意して解く必要があった。

第4問

有機化学分野から出題された。問2の異性体の数を問う設問は発展内容である配向性が関係しており、難関大志望者にとって有利な問題といえよう。問4bの構造式を決定する問題は、炭素原子と水素原子の物質量比が決め手になるのだが、それに気づけず、時間を浪費した受験生もいたであろう。

第5問

有機化学と理論化学の融合問題が出題された。問2aのオゾン分解の生成物の構造に関する設問は、二次試験に向けて構造決定問題の演習を積んでいた受験生は解き易かったと思われるが、bの反応熱を求める問題は与えられた熱量をどのように使えば良いかが分かりにくい設問であった。

昨年同様、各大問すべてに思考力を要するやや難しい設問が含まれているため、化学基礎を含めて履修をできる限り早く終え、センター試験や共通テストの過去問だけではなく、国立大二次試験レベルまでの問題演習を行うべきであろう。問題演習の際には、初見の問題でもすぐにあきらめるのではなく、じっくり考察し、解答を導出する練習をしておきたい。
また、有機化学の出題比率が高いため、優先的に対策を行うことが不可欠となる。今年度は、天然有機化合物および合成高分子化合物は正誤問題の一部の選択肢のみでの扱いにとどまったが、次年度以降は第5問で大きく取り上げられる可能性があるため、対策は怠らないようにしたい。

生物
試験時間は60分。大問数は6題で、昨年度と同様選択問題が無く全問必答で、第2問のみがA・Bの中問構成であった。マーク数は28で昨年度の27より増加した。昨年同様、分野の偏りはなく幅広い分野から出題された。

第1問

「進化と系統」からの出題で、分子時計と人の進化に関する問題であった。問3のアミノ酸配列の予想値の差の原因を考察する問題で、難しく感じた生徒は多かったと思われる。

第2問

「植物の相互作用とバイオテクノロジー」からの出題でA・Bの中問構成であった。A問題は植物の競争と病原菌に対する対応の考察問題であり、問1は乾燥重量と種子数と、与えられた図から導く必要があり、難度は高い。B問題は遺伝子導入に関する問題で前半は基本的な知識問題であったが、問6はトランスジェニック植物がヘテロ接合であることがわかれば容易に解答できる遺伝の問題であった。

第3問

「動物の発生」からの出題で、ニワトリの胚の肢芽から翼や脚が形成されるという典型的な問題ではあるが、図がなく、すべて文章で説明されているため、実験の様子が非常に分かりにくく概要をつかむのに苦労する生徒は多かったと思われる。問2・問3は、会話文と実験結果の把握に時間がかかり、難度はやや高かったと思われる。

第4問

「動物の環境応答」からの出題で、アリの道しるべフェロモンに関する実験考察問題であったが、他の大問と比較すると内容は把握しやすかったと思われる。

第5問

「植物の発生、動物の環境応答」からの出題で、問1は被子植物の特徴の知識問題であり、問2は乗り換えに関する遺伝子型の問題であったが、いずれも難度は低めであった。問3はショウジョウバエの視細胞の誘導の考察を導くための実験を問う問題、問4はショウジョウバエの光走性と視細胞の関連を考察する問題であった。

第6問

「植物の発生と環境応答」からの出題で、問3は水深と花粉形成について、問5は低温での生存と糖やアミノ酸の増加の関連性を調べるための実験内容に関する問題であった。

全体として、昨年度と同様、実験や観察資料から考察する問題が多く出題されたが、図や実験結果の表がなく、文章で書かれている問題が多く、文章の読み取りに相当の時間を要したものと考えられる。考察問題の難度も高く、昨年度と比較すると大きく難化したといえる。
共通テストの生物は単純な知識問題は当然として、文章選択式の正誤問題・実験考察問題・遺伝などの計算問題等、特定の分野に偏ることなく解けるようになることが高得点への必須条件となる。そのためにまずは、「生物は暗記科目である」という概念を捨てる必要がある。教科書で勉強する1つ1つの現象や実験などの意味を正確に理解し、なぜ、そのようなことが起こっているのかをただ暗記するのではなく、理解をすることが大事である。

物理基礎
試験時間は2科目で60分。大問数は3題。分量は昨年度から減少し、マーク数も11で減少したが、昨年に比べると難化したといえる。出題に対する試験時間に不足はなく、1題ずつ丁寧に解答したい。分野ごとの配点は、力学が17点、電磁気が24点、波動が4点、熱力学が5点であり、昨年度の「力学」20点、「電磁気」13点、「波動」13点、「熱力学」4点からは無理のない範囲で変化した。計算問題が少なく、あっても簡素なもので、計算が煩雑にならないように意識して作成されていると思われる。

第1問

小問集合であった。問2においては、力がつりあっているときには、静止だけでなく等速度運動もあることに気をつけたい。問3においては、力学的エネルギー保存則が成り立つことから、運動エネルギーと位置エネルギーの和が一定になるものを選べば良い。

第2問

電磁気で、消費電力や比熱に関する公式をもとに答える出題があったが、公式に数値を代入して計算するのではなく、その公式から各文字との比例反比例の関係を認識しておきたい。

第3問

熱力学・力学・電磁気を含む問題で、純金製のスプーンかどうかを、物理的性質をもとに考察する問題であった。問1は温度変化、問2は浮力、問3は電気抵抗をもとに考察していく設問であった。演劇部という設定には多少無理があるように思えたが、出題内容としては良問といえよう。

普段の演習では教科書を中心とした基礎概念の確実な理解に重点を置き、直前期における過去問演習では、これまでの共通テスト・センター試験の物理基礎を用いて演習を行っていくと良いだろう。

化学基礎
試験時間は2科目で60分。昨年同様、大問数は2題であり、マーク数は昨年より2減少したが、小問数は変わっていない。正誤問題・計算問題・グラフや表を読み取る問題で構成されており、化学基礎の全範囲から偏りなく出題されている。第2問の後半では、昨年同様、やや難度の高い問題も出題されたが、その他は平易な問題であったため、全体としては、やや易化したといえる。

第1問

化学とその役割・原子・イオン・中和・酸化還元などが小問集合形式で出題された。問6では、電離度の大小は中和の量的関係に影響しないということが正確に理解できているかどうかが問われた。問10の電池は酸化還元反応の利用で扱われてはいるが、対策が手薄であった受験生はやや戸惑ったであろう。

第2問

エタノールを題材にした問題であった。問2は加熱時間と液体の温度に関するグラフの正確な読み取りが要求された。問3は蒸留に関する実験結果をもとにした考察問題であったが、b・cは実験操作および得られた結果から必要な情報を正確に読み取り、適切な計算式を立てて解答を導出しなければならない思考力を要する設問であった。

有効な対策としては、まず化学基礎の教科書をすみずみまできちんと目を通しておくことである。今年出題された洗剤は、序章の「化学と人間生活」に取り上げられている一例であり、蒸留の実験操作についても詳しく説明されている。その上で、センター試験や共通テストの過去問演習に取り組むと良い。また、複数の思考過程を要するやや難しい問題に対応する力を養成するためには、私立大学や国公立大学の二次試験を利用するのも効果的であろう。

生物基礎
試験時間は2科目で60分。大問数は3題で、すべてA・Bの中問構成であった。例年通り、生物基礎の各分野からバランス良く出題されていた。問題数は昨年より1問増加し、17問であった。昨年同様にグラフや図をもとに考察する問題が多かったことに加え、さらに知識を活用しなければ解けない問題も増えており、解答に時間を要する問題も多かったため、昨年度より大きく難化したといえる。

第1問

「生物と遺伝子」から出題された。A問題は酵素とATPの性質に関する知識やそれをもとにした考察問題、B問題はDNAの抽出実験に関する考察問題であった。問6は文章をしっかり読めば解ける問題ではあるが、かなりの時間を要したと思われる。

第2問

「生物の体内環境の維持」から出題された。A問題は体内の酸素の運搬に関する問題であったが、問題文中の図を正しく理解できたかどうかで差がついたと思われる。B問題は免疫全般についての問題であり、皮膚移植と予防接種に関する基本的な知識があれば解けるものであった。

第3問

「生物の多様性と生態系」から出題された。A問題はバイオームと植生、食物連鎖に関する基本的な問題であった。B問題は窒素の循環に関連して、下水の浄化と森林の消失における河川の窒素濃度に関する考察問題であった。

対策としては、まず単純な知識問題、文章選択式の正誤問題を特定の分野に偏ることなく解けるようになることが高得点への必須条件となる。そのためには、「生物」同様に、「生物基礎は暗記科目である」という概念を捨て、教科書で勉強する1つ1つの現象や実験などの意味を正確に理解し、なぜそのようなことが起こっているのかをただ暗記するのではなく、理解をすることが大事である。また、教科書で扱われていない実験などが出題される可能性もあるので、問題集などを用いて十分に演習をしておく必要がある。

日本史B
試験時間は60分。大問数は6問、設問数も32問で昨年度と変化なし。さまざまな形式の資料(系図・表・年表・史料・絵図・地図・写真)を読み解いた上で解答する問題が大幅に増加した。政治・社会経済・外交・文化のいずれのジャンルもまんべんなく出題されており、昨年度同様に社会経済史が多く散見された。また、原始からの出題はなく、戦後史については1980年代までが出題されている。日本史に関する知識や理解(語句・年代など)に加えて、正確に資料を読み解ける読解力、そして選択肢一文ごとにじっくり考察できる粘り強さがほぼすべての設問で求められており、難易度は明らかに上がっている。

第1問

『日本の姓と苗字(名字)』
問1は空欄補充の組み合わせ。会話文とメモの内容をじっくり読み解いて判断する。問4は嵯峨天皇の子どもの特徴と背景について系図を読み解いて解答。問5は表から読み取れる内容とX.・Y.の正誤の組み合わせ問題。X.「アメリカ・イギリスに宣戦布告し…」から太平洋戦争(1941~45年)、Y.「天皇の代替わりにともなう改元…」から昭和時代の開始(1926年)と正確な年号を暗記していないと解答できなかった。

第2問

『古代の法制度の歴史、遣隋使・遣唐使』
問1・問2はともに正確な年代感覚を踏まえた上で選択肢を判断する必要があった。問3は計帳史料の読解問題で、(注)を駆使して判断、問4は憲法十七条・養老令・延喜式の史料の並び替え問題。全般的に第2問の古代史は難易度が高かった。

第3問

『中世の海と人々の関わり』
問3は室町時代の運送業者“馬借”を絵図から判断。Y.「近江国の大津や坂本など水陸交通の要衝を活動拠点…」の文章から正長の土一揆が近江坂本の馬借から始まったことを思い出せば、正文と判断できたはず。 問4は16世紀の朝鮮と日本の貿易について述べた史料読解を求めた問題で、(注)を使用し判読する。問5はX.の文章から北海道南部、Y.の文章にある「元軍や高麗軍が使用したてつはう…」から九州北部が特定できれば、地図上での位置は判断できた。

第4問

『近世の身分と社会』
問3の史料1・2について述べたX・Yの文章の正誤判読問題。Y.世直し一揆が19世紀のため、史料2「天明七丁未年…」が18世紀と特定できれば誤文であると判断は可能。 問4も史料3を読解し、適当な組み合わせを判断する問題。リード文に1836年とあるため天保の改革を想起できればd.がふさわしい。

第5問

『日本とハワイの関係史』
問1ではX.長崎海軍伝習所、Y.はヘボンを解答させる難易度が高い設問。問3は1885年から1894年の出来事の並び替え問題。Ⅲが防穀令(1889年)であることを判断できたかどうか。問4は史料を素直・丁寧に読解できれば解答できた。

第6問

『鉄道の歴史とその役割』
問2は、1872年に出された改暦を定めた詔書と、同年開通した新橋-横浜間の9月の時刻表の史料内容の判読問題。史料から改暦が明治五年11月、時刻表が9月であることから改暦以前に時刻表が作成されたことを読み取りたい。
問3は鉄道の旅客輸送と営業距離の数値表をもとに選択肢を読み取る。すべての選択肢に日本史知識(日本鉄道会社、鉄道の国有化、立憲政友会内閣の鉄道拡大政策など)が含まれているため、正確な知識を求められた。
問5は1945~55年の間に撮影された写真X・Yと文章内容の組み合わせ問題。問6も数値表をもとに正文を判断するのだが、時期を特定できないと正答できない(東京オリンピックが1964年、第1次石油危機が1973年)。問7はX.「電電公社の民営化」、Y.「国鉄の民営化」はともに中曽根康弘内閣の政策。

上記からも明らかなように、共通テストで高得点を狙うのであれば“単なる語句の暗記だけ”ではまったく点数に結びつかない。だからといって暗記が不要というわけではなく、日本史を学習する際には各時代・ジャンル・事件・人物等についてのイメージをつかんだ上で正確に語句を覚え理解すること。知識暗記と理解のバランスを意識すること、古代~現代、及び各ジャンルの知識を満遍なく積んでいくことを心がけたい。

世界史B
試験時間は60分。大問数は5題、設問数は34問で昨年度と変更なし。多様な資料(史料・写真・地図・表・絵画)を読解し、世界史的な基本的知識を踏まえ、多面的・多角的に考察する問題が多く出題され、資料を読み飛ばしても語句知識だけで解答できるような問題はほぼなくなった。若干、古代史からの出題が少なかったものの、時代・地域・分野についてはバランス良く出題されていた。このため、高校の授業や参考書等で慣れている「地域史」や「テーマ史」だけの学習、一問一答に依存した学習だけでは高得点には至らない。また、何となく・ぼんやりとした知識だけで世界史を学習していた受験生は選択肢を絞り込めなかった。「まんべんなく(漏れなく)」「幅広い知識・理解」を求める本当の意味での「世界史」の能力が試されていたため、難しく感じた受験生は多かったと思われる。

第1問

『世界史上の学者や知識人』
Aは「シーボルトと著書『日本』」、Bは「ハサン=ブン=イーサーの伝記」、Cは「王国維の論文」について。 問1は中国史では著作・作者を組み合わせた文が並び、リード文にある「解剖学・植物学・薬学」に該当するものを選ばせる今までにない設問。 問4は資料の文章を読み解いた上で、あ.ウラマー、い.スーフィーの意味を踏まえた組合せ問題。 また、問9は資料文の内容をきちんと理解した上で、「ある民族や集団について研究する際に、別の民族や集団が残した記録を必要とする例」として、「あ.」と「い.」の文章がどのような研究なのかを判断させる今までにない形式の出題。

第2問

『ある出来事の当事者の発言や観察者による記録』
Aは「ウィンストン=チャーチルの『偉大な同時代人たち』」、Bは「アメリカ合衆国大統領の演説」。Bの資料内容がキューバ危機後の部分的核実験禁止条約であることを踏まえて解答する。戦後史からの出題なので、現代史まで手が回っていた受験生にとっては難しくなかっただろう。

第3問

『世界史上の人々の交流や社会の変化』
Aは「明治期の政治小説に描かれた国際情勢」、Bは「世界人口の推移に関する表と会話文」、Cは「オセアニアの先住民に関する会話文」。Aは問1~問3まで全て19世紀の欧米史とアジア史からの出題。Bでは表の数値および会話文の内容を合わせて設問に対応する新しい形式の出題が見られた。特に問5では、1850年の東南アジアと日本の人口密度を比較することを求められており、計算をした上で選択肢を吟味する必要があったため、解答するのに時間を要したと思われる。また、Cはオセアニア史で、問7ではメモ資料の内容を読解し正誤の判読を求められた。

第4問

『歴史評価の多様性』
Aは「ジョージ=オーウェルのスペイン内戦での体験」、Bは「絵画を基にした先生と生徒の会話」。 問3にあるスペイン内戦から第二次世界大戦期にかけての日本の政権がファシズム体制とみなすか否か、異なる見方とそれぞれの根拠を組み合わせる問題。 また、問6では、ソ連で1939年から41年までドイツ騎士団が撃退された映画の上映が禁止された理由の仮説について正しい文章を選ばせるという、歴史的事象と知識を組み合わせて解答させる新しい形式の出題。

第5問

『世界史上の墓や廟』
Aは「サン=ドニ大修道院付属聖堂内の墓棺群の配置推定復元図」、Bは「写真を基にした先生と生徒の会話」。問1~問3はいずれも文章を丁寧に読み解いた上で、そこから復元図の形状を判断し、さらに中世ヨーロッパ史の基本的知識を合わせて設問に対応できるように作成されていた。Bは近現代アジア史を中心に地図を使用して設問が作成されており、正確な知識を求められていた。

以上からも明らかなように、世界史を学習する際には、古代から現代まで幅広く、かつ政治史・経済史・文化史まで偏りのない世界史知識を身につけておくことは大前提で、苦手単元をつくらない学習が必須課題であろう。表やグラフの設問に対応するためにも最低限度の年代の知識は必要であり、さらに地図を用いた設問も増えていることから資料集や教科書にある地図や写真等の図版を適宜チェックする習慣を身につけておいて欲しい。基礎知識をおさえることを決して疎かにすることなく、背景や原因、その結果を意識しながら学習し、理解に重点を置くことを意識したい。

地理B
試験時間は60分で大問数5・小問数31であり、令和3年1月に実施された共通テストと比較して大問数は同じ、小問数は1減少した。出題傾向は第1問が自然環境や自然災害、第2問が資源と産業、第3問が村落・都市と人口、第4問が世界地誌、第5問が地域調査となっている。地理Bの全範囲から出題されており、基本知識とその運用、応用力が試されている。

第1問

『自然環境』
東南アジアと中央アメリカの地図による大陸棚の分布、ライン川とポー川の流量や河口形状、チベット高原を源流とする河川流域の植生、オーストラリアの1月・7月の等温線、アフリカの地域ごとの自然災害、日本の月ごとの自然災害の特徴、などであった。一部に判断の根拠に迷うものがあった。

第2問

『資源と産業』
世界の炭田と油田の分布とその資源特有の問題、ヨーロッパとアフリカの地域別エネルギー消費量、工業化が遅れた発展途上国・資源輸出国・第三次産業が進んだ先進国を比較した一人当たり二酸化炭素排出量の推移、化石燃料と再生可能エネルギーの表の読み取り、森林資源の考察、持続可能な資源利用と循環型社会への寄与、などが問われた。いずれも基本的な知識と理解があれば推測可能であった。

第3問

『村落・都市と人口』
富山県砺波平野の散村の空中写真の読図、ある都市の交番・ごみ処理場・市民ホールの分布、ある都市のジェントリフィケーションがおこった地域の考察、バリ・フランクフルト・マドリードの国際航空(旅客)の発着地域、シンガポールとドイツの外国生まれに特定した人口ピラミッド、カナダ・韓国・バングラデシュ・マレーシアの出生率と死亡率、などであった。ジェントリフィケーション(高級化)の意味がわからなくても、問題文には「豊かな人々流入してくる」とあり再開発の結果、従来の不良住宅地区(スラム)の地価が高くなって、生活レベルの異なる住民層が入れ替わってしまうことと気づくはず。都市問題の基本を理解していれば解ける。

第4問

『ラテンアメリカ地誌』
2つの河川の月平均流量グラフと年平均流量、南米諸国の発電方法比較、ブラジルの農作物の輸出額や輸出総額に占める農作物の割合、アルゼンチン・ブラジル・ボリビアの一人当たりGNIと所得上位層が占める割合、ニュージーランドとチリの自然環境における共通点と相違点、ニュージーランドとチリの貿易相手地域の推移、などであった。地誌を総合的にとらえる意識で学習していた生徒は正解の糸口は見つかったであろう。

第5問

『地域調査』
北海道苫小牧市が出題された。苫小牧港付近の地形図読図、苫小牧市付近の河川の流路の特徴、室蘭港と苫小牧港の貨物取扱量の推移比較、苫小牧市の製造業の種目別割合の変化、苫小牧市の中心部の住宅地区(社宅団地)と郊外の住宅地区(戸建て)の人口ピラミッド比較、苫小牧市の人口減少地区とその対策、などであった。苫小牧市が製紙・パルプ業がさかんであったことが予備知識に求められ、なじみがない生徒は判断に困ったと思われる。全体的にはSDGsを意識した「問題の抽出とその解決策」を考えさせる意図があったようである。

今後の対策について。試験に出ることの方向性は旧来のセンター試験と変わらないが、地理的事象の本質を理解し、基本的知識を正しく知り、かつ応用ができることが求められている。語句や地名がそのまま問われることはまずないが、それらを「知っている」ことを前提にして作問されていることを肝に銘じたい。最低限の暗記は必要である。思考力重視だからといって、基礎がないのに多くの問題をやれば成績が上がるという単純なことではない。「思考力」がゼロから生じることはない。鷗州塾の授業はライブでもオンラインでも受講可能である。最小限の努力と時間で、最大の効果を発揮することを目指してもらいたい。

倫理、政治・経済
試験時間は60分。大問数は前年度と同様7つだが、設問数は昨年の33問から32問へ減少した。倫理と政治・経済分野の配点はこれまで通り50点ずつであり、両者ともおよそすべての単元がまんべんなく問われたが、政治分野については若干「地方自治」寄りの出題となった。大量の文章を読み、その内容を踏まえて答える問題が多く、1問あたりの解答時間に注意しなければならない。また、初見の用語が説明され、それを踏まえた上で解く問題があった点も特徴的である。重要用語をひたすら覚え、答えるだけの「一問一答タイプ」の学習だけでは太刀打ちできない。日ごろの学習で習得した知識を、実生活の問題の場面でどのように使うかを考えた学習が不可欠である。

第1問

『源流思想』
「真理」をテーマにした会話をベースとした出題となった。細かい知識を用いた選択肢も散見されたが、正解の選択肢が選びやすく、難易度は例年並みと思われる。

第2問

『東洋(日本)思想』
「人間のあるべき姿」をテーマに会話が展開され、それに基づいて答える形式であった。問4では阿部次郎という受験生にはなじみの薄い人物が出題されたが、資料の読み取りができれば正解にたどり着けるものであった。総じて、大問全体としての難易度は高くない。

第3問

『西洋近現代思想』
「考えること」をテーマに会話が行われ、それをもとにした出題がされている。文章読解を踏まえた出題はされたものの、ロック・ヒューム・ヘーゲルなど倫理分野の王道とも言える出題がされたこともあり、ぜひ得点したい大問だった。また、問2・問3で出題に使われた会話文の内容を踏まえ、問4に答えるという新傾向の出題がされた点も見逃せない。落ち着いて確実に得点につなげたいところである。

第4問

『現代社会分野(青年期含む)』
「未来世代に対する責任」についての会話を読み、それに基づいた出題がされた。問1はトレンドの「SDGs」を意識した選択肢を選んでしまった受験生もいるかもしれないが、あくまでその時々の問題の状況を踏まえた解答を心がけたい。問2ではデジタル・デバイド、問3では青年期の基本的知識が問われ、確実に点数につなげたい箇所であった。残りの問4が資料問題であることを踏まえると、こちらも得点につなげやすい大問だった。

第5問

『国の法制度と地方自治』
問1では地方自治の本旨、問2では最高裁における政教分離原則に関する違憲判決など、政治分野の定番ともいえる出題がされた。問3は、農地法・農業基本法について問うもので、対策が手薄な受験生も多かったと思われる。後半では「民泊」をテーマにした会話を踏まえ、主に公法と私法、日本の立法過程について出題がされた。いずれの設問も、政治分野の知識をきちんと備えていれば解答は容易である。

第6問

『現代経済』
トレード・オフ、マネタリーベースなど専門語句の理解を問う出題が目立つ。問4では昨年度と同様、銀行のバランスシートに関連した出題がされた。面食らった受験生も多いと思われるが、昨年より難易度は低い。出題者が設定する条件を余すことなく踏まえ、落ち着いた対応が求められる。問5では定番の需要・供給曲線、問6では購買力平価説に基づいた為替レートに関する計算問題が出題された。いずれも各概念の正確な理解が問われる。総じて、受験生によっては最も差のつく大問と言える。昨年もトリッキーな出題がされたが、難易度自体は下がっている。

第7問

『住民生活の向上に対する国・自治体の政策』
問1は戦後の地方行政に関する出来事を古い順から並び替えるもの。地方自治について時系列的観点を持っている受験生は少ないと思われ、少々難しい設問であった。問3では地方自治体の収入源について、文章と表をからめた出題が真新しかったが、基礎知識を徹底していれば正解にはたどり着ける。全体として、難易度は昨年並みと言える。

以上のように、倫理、政治・経済の学習を行う際には、学習した語句が多様な角度から問われる点を意識しなければならない。特に経済分野では「なぜそうなるのか」という思考を常に持ち、それが日常生活に与える影響を考える習慣をつけたいところ。また、全分野に言えることとして、キーワードだけを押さえた学習ではなく、そのキーワードが「何を意味しているのか、どのような背景なのか」を自分の言葉で表現できるようにすることを心がけたい。そして、その知識をもとに、問題中の情報・条件を即座に読み取り、キーワードを問題に適合させる訓練を重ねることが肝要である。

国語
80分で大問4題、配点200点は昨年の共通テストから変化なし、解答数は評論と小説でそれぞれ減少し、全体としては38から36へと2個減。第1日程はセンター試験と第1回共通テストの大半を踏襲した問題形式であったといえるが、複数文章や資料を関連付ける問題の増加により、全体としてはやや難化した。

第1問

第1問の評論、昨年度は単独文章に設問内資料が伴う問題形式であったが、今年は2つの論理的文章を読ませる問題であった。檜垣立哉『食べることの哲学』/藤原辰史『食べるとはどういうことか』からの出題。問1の漢字問題に大きな変化が認められた。条件に対応する漢字を選ぶだけではなく、意味対応の可否を選択させる問題が追加された。問2から問5までは従来のセンター試験の問題に類似するものであり、傍線部の根拠となる範囲も広くないので標準的な問題だと評価できる。問6はメモ資料の空欄補填形式の問題で、文章の関係理解を問う問題であった。全体としては標準的。

第2問

第2問の小説、これまでの予想問題でも繰り返し扱った「ノート」補填型の問題が出題された。これも鷗州塾で類似する形式の問題を解き慣れた受験生には十分に対応できるものであった。出典は黒井千次「庭の男」。大きな特徴としては語句問題がなくなり内容理解を問う問題で全体が構成された点にある。ただ問1から問5までの問題は「心情」「行動」の様相を問うもので、従来のセンター試験でも見られた問題類型である。問6の問題ではノート補填型の問題が出題された。多量の条件を落ち着いて理解した上で、微妙な心情差を吟味する難度の高い問題であったと評価できる。全体としては内容問題が全体を占めた点からもやや難化したといえる。しかし、鷗州塾の国語の授業では心情読解のプロセスや小説特有の選択肢吟味法などを丁寧に指導するので、受講者は十分に対応できた問題であろう。

第3問

第3問は、『増鏡』/二条『とはずがたり』からの出題であった。センター試験では珍しかった歴史物語であるが、歴史物語の出題は2年連続であった。古文は試行調査においても有名出典が多いので、通り一遍の文学史知識を付けておくと有利である。問1の単語問題は従来通りだが、文法や敬語に関する独立した問題はなく、問2・問3では内容説明問題が出題された。問4では2つの文章の表現差を「教師と生徒の会話」補填形式で問われた。部分解釈を問うものではなく、ある程度の全体解釈を前提に考察する問題であるため、読解がおぼつかなかった受験生は手を出せなかったのではなかろうか。総じて問題形式の多少の変化はみられるものの、それはセンター試験の時代にも同様であり、古文の基礎知識と読解力を十分に身に付けた鷗州塾の国語受講生は動じず実力を発揮してくれた。全体としては難化。

第4問

第4問の漢文、最後のセンター試験の年から3年連続「漢詩」が出題された点が特徴的である。阮元『揅経室集』からの出題。第1回共通テスト同様に古詩が出題され、それに伴う序文として漢文文章が出題された。各設問は書き下し文の選択などの従来型の問題や基礎句形を問う問題が認められた。漢詩にまつわる問題はお決まりの規則問題で鑑賞問題が無かったことが全体の難易度を標準であらしめた。規則問題の失点を防ぎ、基礎句形や重要漢字などの知識習得を徹底できれば、漢文は短期間で高得点源となる「おいしい」科目である。

次年度以降の問題形式について、ある程度は第1回・第2回共通テストの形式を踏襲するものと予想できる。新傾向問題に対する不安もあるだろうが、マーク式の国語で高得点を獲得するコツは①「与えられた文章の正確な読解」②「出題者との正しい応答」という2点に集約される。そのため現代文では良問ぞろいのセンター試験を題材として、時間内で学術的評論や小説を正確に読み取る練習を重ねるのが良い。一方では、汎用的に機能する解答技術を鷗州塾の講義の中で体得することが肝要。古典科目では従来と同様、古文単語・重要漢字・古文文法・漢文句法を早期に固め、鷗州塾の夏期講習会で「和歌修辞技法」や「漢詩」を短期的に完成させる学習法が有効だ。



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