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2020年04月28日

東京大学二次試験の講評(2020地理)

試験時間は、地歴2科目で150分。大問3題。論述問題中心であり、選択問題が散りばめられている出題形式は例年通り。出題内容としては、例年頻出の日本と絡めた出題が今年度は少なかったことや、隔年で出題される傾向が強い地形図の読み取り問題が今年も出題されず、昨年から4年連続して出題がなかった。分量がやや減少し、比較的書きやすいテーマが多く、難易度は標準的であった。


第1問は、日本列島の地形と自然資源利用に関する問題。設問Aは日本列島の断面図3枚をもとに、山地や平地、台地などの成因や、土地利用について考察する。高さの比率を計算で出す問題があり、非常に難問であるため差はつかないであろう。設問Bは日本の5つの県の人口密度や可住地面積などを比較し、読み取れるデータを検討する。和歌山県や高知県が山がちな地形が多く、平野が少ないことや、香川県が水資源に乏しいなど、ある種の常識を働かせる必要があった。茨城県と長野県でレタスの出荷時期が相違する理由を問う問題があったが、出荷時期を示すデータはなく、難しいと感じた生徒もいただろう。
第2問は、世界の食料と消費に関する問題。設問Aは世界各国の一人当たりGDPの伸びと、動物性食品の摂取量の変化を示したグラフを読み解く。グラフは国名が明示されており、解きやすかったであろう。基本的に動物性食品の過剰な摂取が減少し、健康志向になっていることを読みとれればよい。(3)のペルーとアルゼンチン、ブラジルとの比較は、先住民の割合が高いペルーと、白人の割合が高いアルゼンチン、ブラジルの違いから食生活の相違を導く。指定語句はどの文脈で使うかによって、解釈が違ってくる可能性もあるが、本質がブレなければ問題はない。設問Bは東南アジアの5ヵ国について、コメの生産量、国内供給量、自給率などの大きな推移を示した統計表を用いる。コメの自給率が下がっている国は、工業化を優先した結果であると判断するような大局的視点が必要であった。
第3問は、ドイツと日本の人口動向に関する問題。設問Aはドイツの各州の人口動態を示した表を読み取るが、センター試験にも登場する知識や地域性の特徴が分かっていれば十分解ける。東西ドイツの統一や、東欧諸国のEU加盟によって人口移動が影響したことを想起したい。ただし(3)は指定語句の使い方に迷うと思われる。設問Bは日本の三大都市圏の人口流入・流出に関する大局的な理解を問う。高度経済成長期は太平洋ベルト地帯で工業の集積が起こり、その労働力として人口が集中したこと。1980年代以降は東京への情報一極化が顕著になったことや、バブル期の地価上昇で東京都周辺県の人口が増加したが、バブル崩壊後は地価下落によって都心回帰が起こってきたことなどを見据えた答案に仕上げたい。


東大地理のテーマ自体は難しくないが、ただの暗記ではなく俯瞰的で総合的な視点が問われる。頻出テーマとして、都市空間の機能としての把握、大都市圏と地方を比較した場合の特性、歴史が絡むものとして高度経済成長やバブル経済などがある。教科書の該当ページは繰り返し読み、理解を深めておきたい。


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